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  • 地下からの帰還

    「灼熱期(しゃくねつき)」と呼ばれた地球の温暖化現象により
    地上から地下への移住を余儀なくされた人類は
    およそ200年に渡って地下生活を送っていた。
    やがて時間の経過とともに温暖化は徐々に解消し、
    地上を歩くことも可能になった。
    地下での生活も安定はしていたものの、
    やはり人間は地上で生きるもの。
    失われた200年を取り戻そうとするように、
    人々は地上に元通りの世界を作り始める。
    「またここから始めよう」そんな言葉を口にしながら、
    200年前――西暦2020年頃の地上の風景が再現された

  • AI技術の発達した世界

    地下生活になってから人類は娯楽を全て
    テクノロジーに頼って生活していた。
    優れたAI技術により、
    かつて人間が作るものと遜色ない
    娯楽作品を生み出すことが
    可能になっていた。
    小説、ドラマ、ゲーム、音楽など、
    AI技術で生み出された娯楽たちは、
    人間を癒し、楽しませた。
    そうして長い時間を過ごすうちに、
    「娯楽はAIが生み出すもの」
    という意識が人々に植え付けられ、
    人間はそれを楽しむだけになっていった。
    地上に戻ってきた人々だったが、
    便利なVR媒体も発達し、
    特別不便も不満もなかったため、
    地上に出てきても娯楽は
    基本的にAIが作り、
    人間は受け取るだけという形が
    当たり前となっていた。

  • VRを通した体験の共有

    かつて地上にあったものとよく似た街が
    あちこちに点在するようになり、
    人工的に昼と夜、そして季節まで作り出すことに成功し
    地上と同じように生活を共有することができていた。
    ただし、居住区画に制限があるという
    事情から移動制限がかけられ、
    およそ5万人程度の暮らす居住地域
    以外には移動出来なくなってしまった。
    そこで発達したのが、
    VR技術を応用したバーチャル空間だった。
    公共の建物(図書館や市役所など)から、
    ショッピングセンターまで、
    バーチャル空間で
    利用できるようになっている。
    その後人々は地上に戻ってきたが、
    生活の一部となっていてる
    VRをそのまま活用して、
    どこでも好きな場所で娯楽を楽しんだり、
    仕事に利用している。

  • NEW!
    ORライブとVRライブとは?

    人を集め、生歌・生演奏で開催されるライブを
    「オリジナル・リアリティ・ライブ」略して「ORライブ」、
    VR空間にアバターを用意して現実世界で演奏したものを投影して行われるライブを
    「ヴァーチャル・リアリティ・ライブ」略して「VRライブ」と呼ぶ。
    VRライブには、生身の人間によって行われるものの
    他にAIプログラムにより開催されるものある。
    かつてはORライブも行われていたが、
    トラジティライブをきっかけに危険があるとされ、
    現在ではVRライブのみが認められている。

  • NEW!
    トラジティライブ

    5年前、とある野外フェスの最中に、
    突風でセットが崩落する大事故が起こった。
    数万人が参加していたと言われるそのフェスでは、
    前方の観客を中心に多数の死傷者が発生し、
    阿鼻叫喚の有様となった。
    フェスの主催であったRevivalのボーカル『岳』も
    このときに命を落とした。
    その凄惨なライブはトラジティライブと呼ばれている。

地球は異常な温暖化現象に見舞われて
生活ができなくなり、人類は地下へと移転した。
娯楽を生み出す余裕もなくなり、
その役割は全てAIが担い
VRで楽しむことになった。
もちろん、音楽も……

それからおよそ200年。
再び人類が地上に戻ってきた頃、
あるアーティストが『過去の遺産』を発掘した。
それは自ら音楽を作り、
リアルなライブを楽しむこと。
音楽を取り戻した人々は、その喜びに熱狂した。

ところが。

あるときから、
異常気象が再び発生するようになった。
それは決まってライブが
行われている場所と時間。
その理由が人の歌声にあると突き止められた頃、
事故が起きた。

ライブが始まった途端に起きた突風。
セットが崩れ、観客の上に――

多くの犠牲者を出したライブは
『トラジティライブ』と呼ばれ、
それ以降、リアルライブは全面的に禁止、
VRライブだけが許されることになった。

だが、本当にライブのせいだったのか?
あれほど人々を熱狂させ、
心躍らせた生の歌声は悪いものだったのか?
いや、違う……!

Refrain
この世に再び熱いリアルライブを
取り戻そうとする若者たち。
彼らは真実を知るために、動き出す。
いつか必ず、あの熱狂をこの手に――